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“手探り”で進めた
前代未聞のプロジェクトの行方

 メガマウスザメを-30℃の冷凍庫で保管したまま、骨の成分が似ているとされるミツクリザメの骨を使って、まずは標本のサンプルを作ることにしました。そのサンプルの完成度の高さは予想以上! このサンプルに励まされ、捕獲の翌年2月にはついにメガマウスザメの除肉作業をスタート。丁寧に肉をそぎ、骨だけにする作業を3日間にわたって続けたといいます。

 「中がどうなっているのか、予想もつきませんでした。しかも骨がグニャグニャなので、ちょっとカッターの歯が当たるだけでも骨を大きく傷つけてしまう。骨のある部分を指で確認しながら進める作業は、文字通りの“手探り”でしたね」(大澤さん)

 とくに、プランクトンを濾して食べているメガマウスザメは、エラの形がとっても複雑。肋骨のように伸びる細状軟骨の無数の枝を、細心の注意を払いながら一つ一つ彫り出したと言います。

 そして、3月。すべての部位を冷凍トラックに積んで、滋賀県にある標本づくりの工場へ。メガマウスザメの骨を特殊な液体に漬ける加工を施しました。最後は、仲谷先生が腕によりをかけて形を整え、ついに世界初となるメガマウスの骨格標本が完成したのです。